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2001年7月 JEITAニューヨーク駐在・・・荒田 良平 「米国におけるブロードバンドの動向」 |
2.主要ITソリューション企業のプロフィール (1)
EDS(Electronic Data Systems) 本社:5400 Legacy Drive 創立:1962年 Plano, TX 75024 CEO:リチャード・ブラウン Phone:972-604-6000 売上:192億2,700万ドル URL:http://www.eds.com 従業員数:12万2,000人 <沿革> テキサス州プラノに本拠地を置くEDSは、米国最大のシステム・コンサルティング専門企業である。1962年にロス・ペロー氏によって設立されたEDSは、12万人を超える従業員を抱え、システム・インテグレーション、アウトソーシング、データセンター管理といったサービスを民間企業および政府機関に提供している。また、EDSは、1995年に買収し、子会社として傘下に収めたA.T.カーニーを通して経営コンサルティングサービスも提供している。EDSの顧客には、シェブロン、ベルサウス、米国海軍などが含まれる。同社は1996年、親会社であったゼネラル・モーターズからスピンオフされたが、現在でも売上の20%はGMへのサービスが占めている。
<サービス内容、M&Aなど> EDSは、データセンターや通信システムの管理、アウトソーシングといった従来のITソリューション事業に強い企業として知られてきた。しかし、同社は1999年、米国通信事業者第2位のワールドコムと170億ドル規模のアライアンスを形成し、Eコマースコンサルティング市場に参入を果たした。アライアンスでは、資産、従業員、サービスなどの交換に加え、ワールドコムのITコンサルティング子会社「MCIシステムハウス(MCI Systemhouse)」を16億5,000万ドルで買収している。2001年に入り、EDSは、旅行予約システム開発で定評のあるセーバー(Sabre)[1]の持ち株会社と22億ドル規模のサービス契約(10年間)を締結しており、同社が持つ航空会社向けインフラのアウトソーシング事業を買収している。 表4 EDSの提供サービス概要
(出典: EDS) <最近の大型契約> 表5 EDSの最近の大型契約
(注)連邦政府IT契約では最大 (出典: EDS) <今後の展望> このように、EDSは、Eコマースコンサルティングやオンライン旅行システムのアウトソーシングといった成長市場に積極的に進出する一方、従来のデータセンター管理といった事業もバランスよく行っており、新興のコンサルティング企業が景気減速により大打撃を受ける中、堅実な成長を続けている。
(2)
CSC(Computer Sciences Corporation) 本社:2100 E. Grand Avenue 創立:1959年 El Segundo, CA 90245 CEO:バン・ハニーカット Phone:310-615-0311 売上:93億7,100万ドル URL:http://www.csc.com 従業員数:5万8,000人 <沿革> カリフォルニア州エルセグンドに本拠地を置くCSCは、世界を代表するITソリューション企業である。EDSの最大のライバルとして知られるCSCは、アウトソーシング、経営コンサルティング、システム・インテグレーションといったサービスを提供しており、具体的には、アプリケーション開発、ビジネス・プロセス・リエンジニアリング、ネットワーク管理アウトソーシング、Eコマースコンサルティングなどを手がけている。CSCは政府機関へのITサービス提供で定評があり、売上の25%は米国政府が占める。その他の顧客には、AT&T、エンロン(エネルギー)、ノーテル・ネットワークス、米国郵政公社が挙げられる。 <サービス内容、M&Aなど> CSCは、従来からの大規模ITアウトソーシングを最も得意とする一方で、競合社のEDSやIBMグローバル・サービシズと同様、Eコマース関連のソリューションサービス開発にも力を入れている。とりわけ、ウェブホスティングや情報セキュリティといった分野でのソリューション提供に焦点を当て、顧客企業のEコマース事業を包括的にサポートする体制を整えている。さらに、CSCは積極的なM&Aにより事業拡大を進める戦略を実施しており、過去15年間に買収した企業数は65社にのぼる。CSCは1998年、イタリアのInformatica Group、フランスのKPMGピートマーウィック、ドイツのPergamon、オランダのSYS-AIDといった欧州を代表するコンサルティング企業を相次いで買収し、欧州市場での地位を一気に拡大した。また、2000年には会計ソリューション企業の大手であるMyndを5億7,000万ドルで買収し、財務ソフトウェア・サービス事業の充実を図っている。 表6 CSCの提供サービス概要
(出典: CSC) <最近の大型契約> 表7 CSCの最近の大型契約
(注)シェル、テキサコなど大手石油会社のジョイントベンチャー (出典: CSC) <今後の展望> CSCは政府との取引が多いため、民間セクターのように景気に左右されることなく、安定した成長を続けている。しかし、Eビジネスやウェブソリューションといった新しい事業では参入を果たしたばかりであり、今後、顧客企業のEビジネスを包括的にサポートするソリューションを開発できるかに注目が集まっている。
(3)
IBMグローバル・サービシズ(IBM Global Services) 本社:New Orchard Rd. 創立:1914年(IBM) Armonk, NY 10504 CEO:ダグラス・エリックス Phone:914-499-1900 売上:320億ドル URL:http://www.ibm.com/services 従業員数:13万8,000人 <沿革> IBMグローバル・サービシズは、IBMのサービス部門として同社の中でも急成長を遂げているITソリューション・プロバイダーである。IBMグローバル・サービシズの強みは、IBMが誇るハードウェア、ソフトウェアと各種サービスをパッケージとした「トータル・ソリューション」を提供できる点である。ITサービスを提供する際にも、コンサルタントは自社のハードウェアやソフトウェアに精通しているため、各顧客企業のニーズに見合ったサービスを効果的かつ効率的に提供することができる。 <サービス内容、M&Aなど> IBMグローバル・サービシズが現在、力を入れている分野が、中小企業向けソリューションとウェブソリューションの2つである。同社は2000年末、中小企業向けのB2B Eコマースソリューション「Tradelert」を発表している。同ソリューションでは、オンライン取引サイトの構築からセキュリティ、保険といった多岐にわたる機能が含まれており、資金力が限られている中小企業でもEコマースを実現できる。さらに、ERPベンダー大手のJ.D.エドワーズと戦略的アライアンスを形成し、流通および公共セクターの中小企業向けのウェブベースITソリューションパッケージを開発している。ウェブベースソリューションでは、ERP、CRM、SCM、オンライン調達、ナレッジ・マネジメントなどが含まれている。また、2000年7月には、マーケティングやブランド創造のコンサルティングを専門に手がけるアラゴン・コンサルティング(Aragon Consulting)を買収し、Eビジネス向けのマーケティングソリューションの充実を図っている。 表8 IBMグローバル・サービシズの提供サービス概要
(出典: IBM) <最近の大型契約> 表9 IBMグローバル・サービシズの最近の大型契約
(出典: IBM) <今後の展望> IBMグローバル・サービシズは現在、ウェブホスティングやEビジネスソリューションに加え、情報セキュリティソリューションの開発にも力を入れており、最先端のEコマースソリューションを提供している。とりわけ、PKI(公開鍵暗号)インフラの開発では定評があり、他のITソリューション企業にはないユニークなソリューションとして注目を集めている。PKIは、電子政府の構築や大規模な企業間Eコマースシステムに不可欠なセキュリティ技術として急成長しており、IBMグローバル・サービシズの最も重要なサービスの1つとして今後が期待されている。
[1] アメリカン航空が開発したオンライン旅行予約システムとして誕生し、その後、他の航空会社に同システムを提供する企業として独立した。米国の主要航空会社が使用するオンライン旅行予約システムは、全て同社が開発を手がけている。
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