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2001年10月 JEITAニューヨーク駐在・・・荒田 良平 「米国におけるe-Learningの動向」 |
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6.
e-Learning導入の具体的事例
以下に、企業や大学におけるe-Learningの具体的導入事例を掲げる。これら以外にも、例えばe-learning magazineのウェブサイト(http://www.elearningmag.com/ )にはいくつかの事例が紹介されており、またAmerican Federation of Teachers(AFT)(http://www.aft.org/)が2001年8月末に公表したレポート”A Virtual Revolution: Trends in the Expansion of Distance Education”には様々な大学の取り組みが紹介されているので、適宜御参照ありたい。
(1)
Cisco Systems (出展: http://www.saba.com/)
通信機器大手のCiscoは世界135カ国に38,000人の従業員を抱える。2000年中頃までは、年間平均25社を買収した同社は、毎月700〜1,000人ペースで従業員が増えており、社員教育は急務の課題となっていた。 そこでCiscoはSabaの製品を採用して、中央管理型の100%インターネットベースのe-Learningプラットフォームの構築に着手した。プラットフォームは、@多言語対応、A異なるユーザーグループのビジネスルールへ対応、B多様なフォームに対応したコンテンツ配信、C急増する従業員、顧客、サプライヤー、パートナーを速やかに140のコンテンツ・パートナーと接続させる、ことなどが条件だった。 CiscoはSaba Learning Enterpriseプラットフォーム製品を採用し、コンピテンシー開発、オン・デマンド型ビデオ配信、自己管理型学習、ライブ機能などを取り入れたシステムを稼動させた。その結果Ciscoは@トレーニング・コストの40%削減と、A適材適所の柔軟なナレッジ・コンテンツの配信が可能になった。従業員、顧客、パートナー、サプライヤーへ的確な情報を提供することで、買収後の社員統合が早期に実現するようになり、結果として製品の市場投入が短期化するようになった。
(2)
Honeywell/NexWatch (出展: http://www.elearningmag.com/)
Honeywell Internationalの子会社であるハイエンド・アクセス制御技術のNexWatchは、約25年前にセンサーとカード技術を使ったセキュリティ・アクセス制御技術を開発した。現在は世界5万箇所で利用され、ディーラーが販売・導入・サービスを提供している。 同社は従来は、世界数拠点にディーラーをあつめ、5日間の講習コースを無料で提供していた。ところが、この5日間のディーラーの業務停止で生じる販売機会喪失による損失額は一人あたり3,000ドル、移動費約2,000ドルをあわせるとディーラー1人あたり5,000ドルのコストが発生していることがわかった。さらにコスト以外にも、ディーラーの習得レベルの違いが、講習コース全体の生産性を下げている実態が明らかになった。 そこで同社は2000年1月、同年4月15日までに代替策を検討・導入することになった。同社はCRKInteractive(http://www.crkinteractive.com/)のe-Learningシステムを導入した。その結果、ディーラーの費用負担は従来の5,000ドルから約1,000ドル(CDなどの教材代として50ドル、ウエブベースの試験実施代として200ドル、1日の対人クラス参加費用を含む)へ大幅に低減した。さらに習得知識の量やレベルが向上し、その結果、Honeywell/NexWatchにかかるディーラーからの問い合わせ電話の量は1年間で半減した。
(3)
University of Phoenix Online(UPO) (出展: http://news.cnet.com/)
社会人教育を専門とするApollo Groupは従来型の大学、University of Phoenixを運営するが、UPOはそのオンライン部門である。ビジネスや教育、ITなどの分野でオンラインコースを提供しており、公的機関から正式に認可された大学であるため、もちろん学位も取得できる。 その強みは、従来型の大学をバックに抱え、教授に直に会ってカウンセリングを受けることができることと、カリキュラム作成のノウハウをオンラインでも生かしたサービスの充実である。 一方、受講者にとっては時間と場所を超えて授業を受けることができるという便利な面があると同時に、コストも非オンラインの従来の教育機関と比較して安価である。UPOの場合、一単位(Unit)の費用は495ドル、MBA取得に必要な単位数は51であり合計2万5,245ドルがかかる計算になるが、これは、一般のトップレベルのMBAプログラム、例えばHarvard大学、Stanford大学、University of Pennsylvaniaの学費と衣食住を含む全ての費用の約半分である。
(4)
インディアナ州「Child Care
Learning Initiative」 (出展: http://www.in.gov/
)
インディアナ州の公共福祉部門Family Social Services Administrationは、児童保護サービス・プロバイダ向けに、ウエブベースで資格取得コースを提供している。これは学校に通う時間がないサービス・プロバイダに対して資格取得の道を開くと同時に、生涯教育の推進支援も担っている。
(5)
New York UniversityのVirtual College
地元New York University(NYU)のSchool of Continuing and Professional Studies (SCPS)(http://www.scps.nyu.edu/)が「Virtual College」と銘打ったオンライン・コースを設定しているというので、私自身もその“オンライン説明会”に参加を申し込んでみた。 インターネットで参加申込みをすると、数日後にマイク付きヘッドフォーンが送られてきて(誰が費用負担しているのだろうか?)、“オンライン説明会”の数日前に電子メールで具体的な参加方法についての説明が送られてきた。当日は、開始時間までにインターネットで指定されたURLにアクセスし、指定されたパスワードでログインして、音量調整をして待っていると、いよいよ説明会開始である。 説明自体はパソコン画面上に次々に表示される資料に沿って説明者が音声で行なうので、非常にわかりやすい。また、画面上の小ウィンドウに現在誰がログイン(参加)しているか、誰がしゃべっているのか(しゃべっている人のところに「マイク」マークが表示される)などが表示されており、「挙手」ボタンをクリックすると自分の名前のところに「挙手」マークが表示され、説明者が「マイク」を渡してくれて、こちらから音声で質問もできるようになっている。さらに、「笑い」ボタンや「拍手」ボタンもあって、これらをクリックすると自分の名前のところに「笑い」や「拍手」マークが表示され、臨場感が出るよう工夫されている。説明のあと質疑応答があり、「追加質問は電子メールで」ということで、最後は全員が拍手(もちろんパソコン画面上の)で説明者を称えて終った。 まさに“オンライン説明会”に参加した十数人があたかも一つの教室に座っているような感覚であったが、実はパソコンの前でお茶をすすりながらリラックスしてヘッドフォーンの音声を聞いているので、実際に教室に居るよりも集中できるような気がした。 なお、この“オンライン説明会”に参加するためにパソコン等に要求されるスペックは、 ・ Windows 95、98又は2000 ・ 動作周波数が最低300MHz以上のPentiumプロセッサ搭載機 ・ 主記憶容量64MB以上 ・ スピーカー/マイクロフォーン端子付き ・ Internet Explorer 5.0がインストールされていること というもので、特別なものは何もない。また、私は職場のLAN経由でインターネット接続したが、ダイヤルアップ接続(56Kbps)でも問題ないということで、例えば出張先のホテルからでもパソコンからインターネット接続さえできれば参加可能である。
(6) MITのOpenCourseWare (出展: http://web.mit.edu/ocw/ )
もう一つ、非常にユニークなe-Learningとしてここで触れておきたいのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)のOpenCourseWareと呼ばれる取り組みである。 MITは2001年4月4日付けで、10年計画で公開ウェブサイトを構築し、MITの2,000講座のほぼ全てについて講義ノート、問題集、概要、試験、シミュレーション、ビデオ講座などを無料で公開すると発表した。すなわち、教授の「メシの種」であった講義資料を無料公開し、MITに授業料を払わなくても誰でもインターネットで講義内容が入手できるようにしてしまおうということである。4月3日付けのニューヨーク・タイムズ紙はこの取り組みを、「他の大学が講座をインターネット大衆に売って儲けようとしている一方で、MITは正反対の道を選択した」と報じている。 このあまりにも大胆な構想に対しては、いかにMITが先進的だとはいえやはり一部教授陣からの反発もあると聞いており、果たして成功するのかどうかはわからない。仮に「時期尚早」でうまくいかなかったとしても、これは単に「教育にインターネットを活用する」にとどまらず、IT革命の本質は何か、その中で教育は、また大学は如何にあるべきかという問題を提起する、非常に興味深い構想であり、「さすがMIT」と唸らせられる。 日本の大学改革の中からも是非こうした発想が出てくることを期待したい。
おわりに
事例紹介のところで触れたように、私自身がオンライン・セッションを体験してみて、e-Learningが非常に身近なものになってきていることを実感した。企業内においても家庭においても、パソコンと通信環境(企業内イントラネットやブロードバンドなどの“インターネット常時接続”環境)さえ整えば、多少インターネットが使える(ウェブサイトのブラウジングができる程度でOK)人であれば、手軽にe-Learningができるようになってきている。 こうした中でe-Learningは、当初は企業内教育を中心に発展するのだろうが、そのメリット・デメリットを考えると、e-Learningが真価を発揮するのはむしろ社会人教育、それも一般教養ではなくビジネス・スキル系の教育ではないかという気がする。日本も今やゼネラリストの時代からスペシャリストの時代へと移り変わってきており、ビジネスマンの再教育や再雇用支援のための専門教育においてe-Learningは重要なツールになるであろう。
冒頭に、e-Learningは「インターネット(イントラネットを含む)を活用した学習」と書いたが、実はこの定義は本質的ではない。先々月の駐在員報告で書いた「電子政府」などと同様、IT(インターネット)を課題解決のためのツールと捉える発想からすれば、e-Learningにおいても「IT(インターネット)を活用する」ことが重要なのではなく、それによって何を実現するのかが問われる。したがってe-Learningはむしろ、「各種教育・学習へのITソリューションの適用」ということになる。 1998年7月(日本では2000年10月)以降、TOEFLは「CAT(Computer Adaptive Test)」というコンピュータ受験に切り替えられ、受験者全員が同じ問題を解くのではなく、コンピュータがリアルタイムで受験者のレベルを判定し、正解が続けばより難しい問題が、不正解が続けばより易しい問題が自動的に出題されるようになり、より正確にレベル判定ができるようになった。(レベルの低い人はひたすら鉛筆をころがす、ということがなくなるわけである。) なるほど、ITを活用すれば、全員に同一の物差しをあてはめるはずの「試験」でさえ個々人の能力に応じてカスタマイズされたものにできる。ましてや、個々人の必要性や関心に応えるための「教育」であれば、ITを活用することによる可能性は計り知れない。 初等・中等教育の規制を主に州政府が行なっているため日本に比べe-Learning導入により大きな困難さを抱える米国が、より良い教育を実現するために真剣にe-Learning導入に向けた改革に取り組もうとする姿勢から、学ぶべきことは大きい。
個人個人が何を学びたいのか。企業や学校は職員や学生に何を学ばせたいのか。これらが明確であれば、それを実現するための手段を広い意味でのe-Learningが提供してくれるであろう。 (了)
本稿に対する御質問、御意見、御要望がございましたら、Ryohei_Arata@jetro.go.jpまでお願いします。
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