2003年4月  JEITAニューヨーク駐在・・・荒田 良平

米国のIT企業の対中国観


はじめに

今月は、米国のIT企業の対中国観について取り上げる。
「眠れる大国」中国の近年のめざましい急成長については、今さらここで改めて言うまでもないであろう。改革開放経済が進展し、WTO加盟も実現した現在、13億人の人口を有する中国は、巨大な潜在市場として、また無尽蔵の安価な労働力の供給源として、世界中の企業や投資家の関心を集めており、また、ITをはじめとするハイテク分野においては、中国は優秀な技術者・研究者の確保という観点からも重要性を増している。一方、シリコンバレーや台湾などから経営知識を有する人材が流入し、こうした中国の強みを活用したビジネスを展開することによって、国際競争力を持った中国企業が出現してきており、中国を「機会」であると同時に「脅威」であるとする見方も強まってきている。
こうした状況を踏まえ、このたび、ニール・マイルズ社に依頼して、主要IT企業に対中国観についてのアンケート・インタビュー調査を実施してもらった。今回は、その結果についてご紹介することとしたい。

今回の「米国のテクノロジー企業にとっての中国〜潜在的機会か脅威か」と題する調査は、米国の主要IT企業等に下記の11の質問を送付し、協力を得られる企業等に今年1月から3月にかけて適宜電話等でインタビューを実施して、その概要をとりまとめる形で実施した。
質問項目と協力企業等は以下の通りである。また、調査にあたっての参考文献を本稿の末尾に記載しておくので、御参照ありたい。

質問項目

1. 米国のテクノロジー企業にとっての中国の役割
質問 (1): 貴社にとって中国とは?

2. 大中華圏の影響
質問 (2): 台湾の企業と専門技術が中国本土に移転し、「大中華圏」と呼ばれる市場を形成している。これが貴社の属する産業にどのような影響を及ぼしているか。

3. 中国本土における香港と台湾の成功
質問 (3): 香港や台湾の企業が中国本土でも成功できると考えるか。

4. 中国での事業経営
質問 (4): 貴社は、中国での事業経営において、他のアジア諸国での場合に比べて、多くの困難に直面していると思うか。また中国で直面している困難の中で、貴社の属する産業に独自のものは何か。

5. 米国政府の禁止措置の果たす役割
質問 (5): 米国政府が、最新式の設備またはプロセス技術の対中輸出を禁止しているにもかかわらず、中国では米国のベンチャーキャピタルや外資直接投資が増えている。また、中国のベンチャーキャピタル(VC)事業も発展しており、VC団体に所属するVC企業が増えている。米国政府の禁止措置は、単に米国企業の利益の可能性をなくしているだけだろうか。貴社が中国を投資機会と見なしているならば、米国政府の禁止措置についてどう思うか。

6. 中国における広範な知的所有権侵害活動
質問 (6): 知的所有権侵害は、中国に関連してよく挙げられる問題であり、米国政府の輸出禁止措置の基本的な理由となっている。中国では、米国その他の諸国に比べて知的所有権侵害がより広範な問題であると思うか。

7. 米国企業における中国人人材
質問 (7): 貴社では、製品設計の分野で、どの程度活発に中国人の人材を開拓しているか。プロセス設計、研究、開発の各分野ではどうか。

8. 中国で教育を受けた技術者・科学者の増加
質問 (8): 毎年、中国で教育を受けた技術者・科学者が増加している中で、中国企業が単なる製造業から設計の分野へと移行していることに、どのような脅威を感じているか。

9. 中国vs.シリコンバレー:公正な戦いか?
質問 (9): 新しい中国企業が、設計の分野で、シリコンバレーの確立された企業と直接競争できると思うか。
10. 中国企業による米国人幹部の採用
質問 (10): 中国の企業が、工場や設計部門の効率的な運営のために、米国企業から経営の専門知識を持つ幹部を採用するかもしれない、という脅威には、どの程度信憑性があると思うか。

11. 中国は米国企業にとって新たな機会か、それとも脅威か。
質問 (11): 中国は米国企業にとって新たな機会かそれとも脅威だと思うか。
質問 (11-A): 脅威だと思う場合、現実的に考えて、米国企業への影響はいつ頃出ると思うか。これはどの程度の脅威だと思うか。特定の産業または副産業にとって、特に脅威だと思うか。
質問 (11-B): 機会だと思う場合、その規模はどの程度だと思うか。どのような企業もこの機会を活用できるか。特定の産業または副産業にとって、特に大きな機会となると思うか。

協力企業等
O America Online - Time Warner
O Asia Pacific Ventures
O Cisco Systems, Inc.
O Company Withheld
O Dell Corporation
O IBM
O Intel Corporation
O Intuit Inc.
O Oracle Corporation
O Siebel Systems
O Tensilica
O Virtual Space Networks
O Warp Nine Engineering
O Yahoo, Inc.
O 匿名企業(大手IT企業)
O ニューヨーク大学Stern School of Businessの大学院生にもインタビューを実施

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