98年4月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
米国産業におけるIT活用の動向(後半) -1- |
前回に引き続き、米国産業におけるIT活用について概観する。事例として、前回は製造業を挙げたが、今回は金融業等サービス・セクターを見ることとしたい。なお本報告は主として米国の調査会社WASHINGTON CORE社に作成を依頼した「米国経済の中の情報技術」を基に作成するものであり、オリジナルのソースとしては主に米国の業界誌であるInformation Week誌と Inter@ctive Week誌を参考にしている。 (2)金融業 金融業は、米国におけるITのリーディング・ユーザーと考えられている。商務省の国勢調査局(Bureau of Census)によれば、従業員の84.5%が業務にコンピュータを使用する金融業は、民間セクターにおいて最高の普及率をマークしている。また、インフォメーションウィーク誌や全米研究協議会が行った調査でも、金融業界は営業収入に対するIT投資の割合で他のサービス業を上回っている。金融業界は、投資額だけでなく、ITの水準においてもトップクラスに位置付けられており、自動決済機関(automated clearinghouses)、ATMやクレジットカードをサポートする大規模WAN、株式市場におけるリアルタイム取引処理などのシステムをいち早く導入したことで知られている。 金融機関は従来、小切手の決済、信用リスクの分析などのいわゆるバックオフィス業務を自動化するためにITを活用してきた。つまり、ITシステムの目的は、業務の効率化と人手の削減にあったわけである。しかし、近年になると、金融業界でもフロントオフィス自動化の重要性が強調されるようになり、利用者に直結した情報システムが急増している。フロントオフィスITの例としては、ATMの高度化(株式売買や投資管理といった機能の追加)、オンライン・バンキング、データ・マイニングなどが挙げられる。これら新しいタイプのアプリケーションの目的は、顧客に即効的なメリットをもたらすとともに、それを通じて緊密かつ永続的な関係を作り上げることにある。 現在、金融業界においてIT投資が拡大している背景には、次のような要因がある。
●活発なM&A
●ノンバンクとの競合
●顧客離れ防止策の必要性 これらの背景により、多くの金融機関におけるIT投資が拡大しているが、それぞれのITの内容も高度化している点も注目に値する(Java、人工知能、並列処理などの利用において、金融セクターは先端的役割を果たしている)。以下、それらの現状をいくつかの例を通して検討する。
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