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98年910月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
米国における
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● はじめに
今年の2月号での報告に続いて、再度Y2K問題を取り上げる。2月の時点では次の報告は2000年までに1年を切ってからと考えていたのだが、この8月にあと500日を切るというところから米国においては様々な動きが吹き出してきており、また日本でもアクションプランの策定がなされ対策のピッチがますます上がってきているとも聞いている。ここで一度整理しておくことも必要ではないかと思い、前回報告を前提として米国におけるその後の動きについてのみ記すことにする。 なお、今回の報告もインターネット上から様々に集めた資料、ITAA(全米情報技術協会)を訪問してのインタビュー、ワシントン日米コンサルティングから提供されている各種の報告等を基にしている。利用している主なウェブサイトとしては、政府関連の情報については、後述する“大統領2000年変換委員会(http://www.y2k.gov)”や“連邦政府Y2Kゲートウェイ(http://www.itpolicy.gsa.gov/mks/yr2000/y2khome.htm)”、民間情報主体のリンク集としては“ITAA(http://www.itaa.org)”やコンサルタントのピーター・ド・ジェイガー氏らが開いている“The Year 2000 Information Center (http://www.year2000.com)”などである。 1. 連邦政府の対応 (1) 2000年変換委員会
2000年変換委員会の議長に任命されたのは、OMBの前行政管理担当副長官のジョン・コスキネン氏で、副議長にはOMBでY2K問題を担当していて、1月にホワイトハウスの国家経済会議の大統領副補佐官に就任したサリー・カッツェン女史が任命された。委員会は各連邦機関のCIO(Chief Information Officer)等政府職員のみからなる50名弱の規模のものである。 4月以降、毎月会合を開き、各連邦政府機関のY2K対策の進捗状況や所管する民間セクターの状況などを中心に意見交換をするとともに、後述するグッド・サマリタン法やナショナル・キャンペーンのアイデアなどもここで議論されている。また、コスキネン議長は、“nation’s Y2K czar(ツァー、旧ロシア皇帝などの専制君主を指す言葉)”とも呼ばれているが、自らは“cordinator, facilitator, and catalyst”と称して、委員会の議長役の他に、議会の公聴会などでの証言や各種の講演などで大活躍しており、高い評価を受けている。(余計なことだが、コスキネン議長は日本に行って、自分のカウンター・パートは誰だと思っただろうか。役職では内閣内政審議室長ということなのかもしれないが、このような問題では、最後まで責任を持ってやり遂げる専任者が個人名で指名される米国のやり方のほうが優れているのではないだろうか。) (2) 大統領のY2Kイニシアチブ
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企業が2000年問題の対応のために、その対策方法や、製品やサービスのY2K対応状況等について善意で情報提供をした場合、その情報により万一被害が生じたとしても、その企業のライアビリティは問わない(製品そのもののライアビリティを制限するものではない)という主旨の「グッド・サマリタン法」と呼ばれる法案を政府として提出準備中であること(後述)。
蛇足だが、この日、ゴア副大統領もクリントン大統領に先立って講演しているが、どちらも初めてのY2K問題への言及であり、政治的には遅すぎるとの声も聞かれた。下院の政府運営・情報・技術小委員会議長として、長くY2K問題の公聴会を開いてきたステフェン・ホーン議員(共和党、カリフォルニア)はこの日の講演について、「彼らはY2K問題がどうなるかについて、これまで米国民と情報を共有することを一切してこなかったが、ようやく否認の時期は終わった。」とその対応の遅れを批判している。 その前から、共和党は現政権のY2K対応を批判しており、6月23日のITワールド・コングレス’98において、共和党の次期大統領候補と期待されているスティーブ・フォーブス氏(Forbes誌CEO)もその講演の中で(私も聴いていましたが)、「現政権の技術の要である副大統領殿、あなたはこの5年間(Y2K問題で)一体何をしていたのか。」と皮肉った。(同コングレスに衛星中継で登場したゴア副大統領はEコマースのプライバシー問題の話が中心で、Y2Kについては触れていなかった。)また、共和党は2000年に大きな問題が生じた場合には、それをゴア副大統領の責任とすることで、同年の大統領選を共和党に有利にしようとしているなどとの報道もなされていた。それらもあってか、この日ゴア副大統領は、「Y2K問題はマネージメントとプログラミングに対するチャレンジであって、ポリティカルなフットボールであってはならない。」と政治的な利用に釘をさしている。
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