98年11月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

米国におけるデジタル認証の動向-1-

はじめに

今回の報告は、米国におけるデジタル認証(Certification)の動向についてである。昨年10月、11月の暗号に関する報告の際に、認証の動向についても記したが、1年を経てどのように利用されてきているのか等について報告することとしたい。その報告に入る前に、この8、9月号でお伝えしたEコマースに係る議会での審議の結果のみ、まとめてお伝えしておこう。

報道されているように、Eコマース関連法案の審議は、年度が変わってしまって3週間後の10月21日に大統領が署名した5千億ドルの歳出承認法にオムニバスとして盛りこまれ、土壇場でいくつかの法案が成立することになった。まず、インターネット・タックス・フリーダム法については、モラトリウムは3年間として成立した。プライバシーについては、13歳未満の子供からは親の承諾無しでプライバシー情報をとってはならないとするチルドレンズ・オンライン・プライバシー保護法が通った。コンテンツに関しては、チャイルド・オンライン・プロテクション法という名称で、未成年者でないという身元確認なしで、子供に有害な画面を見せたウェブ提供者を罰するという法律が成立した。しかし、これについて、表現の自由を擁護する団体などが、昨年違憲とされた通信品位法と同様の問題があるとして、既に提訴を行っている。さらに、デジタル署名に関しては、後述するガバメント・ペーパーワーク・エリミネーション法が通っている。

歳出承認法とは別に議会を通過した法としては、まず、WIPO条約のインプリメンテーションのためのデジタル・ミレニアム・コピーライト法が成立している。データベースの過度な保護になるとの議論を呼んでいた部分は最終的に削除された。また、チャイルド・プロテクション・アンド・セクシャル・プレデター処罰法が、ネット上で子供にわいせつな情報を流したり、児童ポルノを流したりする者を罰するものとして成立している。さらに、Eコマースとは関係ないが、会期末ぎりぎりに2000年情報公開法が成立するとともに、政府のY2K対策費として、34億ドルの特別予算が計上された。
 
ドメイン・ネーム・システムについては、9月末日をもって政府が持つ全ての責任を民間機関に引き継ぐという目標からやや遅れたものの、10月20日に商務省全米通信情報局(NTIA)が、Internet Assigned Numbers Authority(IANA)の後継機関を条件付きながらも「コーポレーション」として認めるとの決定をしたことで、大きな山を越えることになった。このコーポレーションはInternet Corporation for Assigned Names and Numbers (ICANN) と名づけられ、IANAを率いてきたジョン・ポステル博士がこの移行に精力を傾けてきたが、惜しくも博士は10月16日に55歳で急逝している。暫定のボード・メンバーとしては、米4名と仏、豪、蘭、西、日から各1名の9名が選ばれており、そのうちから会長として、最近の著作Release2.0でも有名なエスター・ダイソン女史が、またボード・メンバーとは別にコーポレーションの暫定CEOとして、インターネット2の発案者であり、その事務局たるUniversity Corporation for Advanced Internet Development (UCAID)の立ち上げも行ったマイケル・ロバーツ氏が選定された。日本からのボード・メンバーは慶応大学の村井純教授である。NTIAは承認の条件として、ICANNに対して、世界を代表するフル・ボード・メンバーの選定、オープンな意思決定方法、財政基盤の整備等について、多くの課題を出しており、今後ICANNの中で1年程度をかけて、整備が進められることになっている。


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