98年12月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

米国における
情報技術研究開発政策の動向-1-

はじめに

11月16日から20日までラスベガスにおいて開催された秋のCOMDEXに今年も行く機会を得た。2回目ということで驚きは前回ほどではなかったが、やはりその活気については目を見張るものがあった。公式発表については承知していないが、昨年にも匹敵する22万人が来場したと言うニュースも見られるほど、会場はごった返しており、人気ブースは人をかき分けての見物ということになった。今年からIBMが欠け、コンパック、デルも独自のブースは出しておらず、サン、アップルなども前回同様参加していないが、それでもそれを感じさせないほどの活況であった。感想だけ一言述べてみたい。

日本からの一般の来場者数は経済の状況を反映して昨年ほどでないように感じられたが、出展の方は昨年と同様のプレゼンスを示していた。中でも、東芝、松下、日立、ソニーなどはマイクロソフトに次ぐ広いブースを確保して、情報と家電の融合等について興味深い展示をしていた。アジアの各国は同様に厳しい経済状況を反映しているのだろうと思っていたが、韓国や台湾は昨年以上の出展と来場者があったように感じられ、ITに賭ける意気込みが伝わってくるようであった。

展示の内容として目についたところとしては、米国でのデジタル放送開始ということもあってか、松下、ソニー、フィリップスなどを中心とした情報家電機器がまず上げられよう。また、デジタル・カメラは昨年にも増して身近なものとして受け入れられているようであり、みな手にとって試し撮りした写真やフロッピーをもらって帰っていた。

COMDEXをリードするマイクロソフトは、ウィンドウズ2000、オフィス2000、SQLサーバー7.0が見所であったが、小さなコーナーで私のアクセシビリティについての初歩的な質問に、口にくわえたスティックでキーボードをたたきながら一所懸命説明してくれた車椅子の研究者に感謝したい。

PCでは、ソニーなどが先鞭をつけた薄型ハンドヘルドが多くのベンダーから提供されており人気を集めていた他、ビル・ゲイツ氏も基調講演で新ウィンドウズCE2.1搭載の何台ものH/PCを並べて紹介したこともあり、それらの機種に触れて試してみる人が多く見られた。と言っても私の見るところ、まだまだ米国でそれらの機種を使っている人を見かけることはほとんどなく、多くの人は最初に購入したちょっと重いラップトップを使っているようだが。

昨年はまだ話題先行だったUSB、IEEE1394、IrDAなどのパビリオンは、今年は実際に使われているものとしての展示となっており、40〜50社も展示していたUSBのデモで、他のベージュのPCにはさまれて使われていたiMACが妙に新鮮に見えた。今年の話題先行型のものとしてはLINUXが上げられようが、15社ほどが集まったLINUXのコーナーにはやはり多くの人がつめかけていた。

 夏から秋にかけてちょっと蔭りが見えかけた米国経済も、COMDEXの活況を見るとまだまだ行けると言う感じであり、株価もここのところまた最高値を更新し始めている。日本も不況だからなどと言っていないで、こういう時こそIT投資に本腰を入れるべく、COMDEXなどの活況を肌で感じに来るべきではないだろうか。(もちろんCOM JAPANは当然見ていただいた上での話ですが。)

さて、以上の前置きと直接は関係ないが、今回の報告では米国におけるIT分野の研究開発政策について、CIC計画とスーパーコンピュータ開発に焦点を当てて、その現状を見てみたい。なお、この報告は米国連邦政府を中心とする各種のウェブサイト、ワシントンを訪問しての取材、ニューヨークタイムズ等の記事、そしてワシントン日米コンサルティングの提供情報などを基に作成するものである。


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