99年3月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

米国におけるハードウェア・ベンダーのソリューション・ビジネス戦略(後半) -1-


(3)コンパック/DEC ――得意分野の確立

設立:1983年1957年
売上高:246億ドル/130億ドル(年)
本社:テキサス州ヒューストン
純利益:18億5,500万ドル/1億4,100万ドル
従業員数:32,656人/54,900人
発行済株式時価総額:650億ドル7,690万ドル/83億3,900万ドル

名称
コンパック・サービス(コンパック内)
責任者
ジョン・ランド上級副社長
(John Rando, Senior Bice President)
全体的戦略
ウィンドウズNT/アルファのコンピュータ環境の整備。
ターゲット層
フォーチュン1000企業

(注)98年速報値では、売上高312億ドル、純利益は27億ドルの赤字。

©Washington|CORE


(企業概況)
 98年2月にコンパックによるDEC(Digital Equipment Corporation)買収が決まり、従業員7万人、年間売上高380億ドル(97年売上の単純合計)に及ぶ巨大企業が誕生した。この新企業はハードウェア販売で見ると、IBM、ヒューレッド・パッカードに次ぐ国内第3位となる。コンパックが得意とするパソコン製造と、DECが強みとするハイエンド・コンピューティングとサービス能力を融合し、幅広いサービスを提供するのが同社の狙いである。

 両社の合併は、98年夏に正式に完了したばかりで、組織的には吸収された側のDECも、従来からの形態を維持している。特に、DECのサービスが同社全体のソリューション・ビジネスの基盤となっている。と言うのも、コンパックはハードウェア製造に集中しており、これまでソリューション・ビジネスには全く進出していなかったからである。そこで、本ケーススタディで報告するコンパックのソリューション・ビジネスとは、元DECが提供するサービスのことである。

DECの過去10年間にわたる売上を見ると、ハードウェア販売とソリューション・ビジネスのバランスが比較的安定していることがわかる(図6参照)。ハードウェアに関して、DECはUNIXや64ビットのアルファ・マイクロプロセッサー技術を基盤としたハイエンド・コンピューティングに力を入れてきた。近年は、ウィンドウズNT環境やネットワーク・インテグレーションなどへの特化が進んでいる。

図6:DEC売上内訳の推移
(FY1987−FY1997)

 DECはハードウェア・メーカーとしてだけでなく、システム・インテグレーターとしても、かなりの知名度を誇ってきた。他社に先駆けてソリューション・ビジネスに着手したことが功を奏したのである。80年代後半といえば、ほとんどのメーカーがハードウェアの製造に躍起になっていた時代である。しかし、DECはその時点で既に、総売上の約30%にあたる金額をソリューション・ビジネスから獲得していることがわかる。レッジウェイ・グループが88年、89年に行った調査によれば、ソリューション・ビジネス分野におけるトップ企業は、EDS、CSC、TRW、ADPとなっており、それに続きDECは5位の座を確保している。

 その後、多くのベンダーがソリューション・ビジネスに注目していくにつれ、DECの位置は業界10位にまで低下したが、DECのシステム・インテグレーターとしての評価は依然として高かった。97年にコンピュータワールド誌が行った調査によれば「最も顧客満足度の高いシステム・インテグレーター」と評されている。DECのもう一つの強みとは、コンピュータ業界の王者、マイクロソフトと初めて長期にわたる信頼関係を築いた企業であるという点である。現在でも、両社の関係は良好で、マイクロソフト認定システムエンジニア(MCSEs; Microsoft Certified System Engineers)の数は2,500人と業界最多を誇っている。


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