2. 連邦議会におけるY2Kへの取組み
(1) 下院の公聴会
前回も報告したように、米議会上下院の多くの委員会がそれぞれの任務の観点からY2K問題 を取り上げている。下院では引き続き、政府改革・監督委員会の政府運営・情報・技術小委員会(ス
テフェン・ホーン議長(共和党、カリフォルニア州))と科学委員会の技術小委員会(コンスタ ンス・モレラ議長(共和党、メリーランド州))が政府機関のY2K対策進捗状況報告のチェッ
クや各種の技術問題やセクター毎のY2K進捗度などを中心に、共同(H+M)あるいはそれぞ れ(H又はM)で頻繁に公聴会を開催している。公聴会で聴かれたセクター毎の進捗状況など
は後述することとして、ここでは99年(第106議会)に入ってからの公聴会の日付とテーマの み掲げておこう。
10/26 Y2K and Nuclear Power: Will Reactors React Responsibly? H+M
10/22 Y2K and Nuclear Power: Will Reactors React Responsibly? M
10/06 State of the States: "Will Y2K Disrupt Essential Services?"
H+M
09/27 The Year 2000 and Medicare: "Is Health Service Delivery at
Risk" H
09/23 Small Manufacturing and the Challenges of the New Millenium
M
09/15 Year 2000 Computer Problem: "Implications for International
Travel" H
09/09 FAA and Y2K: "Will Air Travel Be Stopped or Significantly Delayed
on January 1, 2000?" H+M
08/04 "Year 2000 and Computer Security: The Expanded Risk of Financial
Fraud H+M
06/23 Legislative Hearing on H.R. 1599, the "Year 2000 Compliance
Assistance Act" H
05/12 Y2K in Orbit: Impact on Satellites and the Global Positioning
System H+M
04/13 Status of the Federal Government's Progress In Fixing the Year
2000 Computer Problem M
03/15 "Will Transportation and FAA be Ready for the Year 2000?" H+M
03/09 "The Impact of Litigation on Fixing the Year 2000 Problem"
H+M
03/02 "Oversight of the Year 2000 Problem at the Department of Defense:
How prepared is our Nation's Defense?" H+M
02/26 "The Year 2000 Problem: The Y2K Status of the Department of
Health and Human Services"
02/23 "The Year 2000 Technology Challenge: Will the Postal Service
Deliver?" H+M
01/20 "The Year 2000 Problem: Status Report on Federal, State, Local
and Foreign Governments" H+M
(2)上院Y2K 技術問題特別委員会
下院各委員会での公聴会も盛んであるが、何と言っても議会のY2K活動の中心は、上院の Y2K技術問題特別委員会(ボブ・ベネット議長(共和党、ユタ州)及びクリス・ドッド副議長(民
主党、コネチカット))(http://www.senate.gov/~y2k/)である。ベネット議長はコスキネン
議長と並ぶ、米国のY2Kの顔となっている。こちらでの公聴会も、ここのところほぼ毎週開催 されており、10月13日の公聴会でベネット議長は昨年4月の委員会設置後32回目と言ってい
る。人が集まれないときはバーチャル・ヒアリングと称して、ホームページ上で委員会側の問題 提起と証言者側の証言が公表されるという形を編み出すなど、フルパワーで大詰めの押えをし
ているというところである。こちらも公聴会のテーマのみ掲げておく。
10/22 McDonalds: Is largest "small business" Y2K ready? online hearing
10/13 International preparedness: What in the World Will Happen?
10/07 'Virtual' Hearing on Emergency Preparedness - online update
09/30 "Will Y2K Snarl Global Transportation?"
09/28 Y2K and Russia: Potential impacts & future consequences?
09/21 Y2K and Education: "Will Our Schools Make the Grade?"
08/04 Y2K Update on Gas & Electric Utilities - Virtual Hearing
07/29 Y2K Response, Recovery, and Cyber-Reconstitution: Understanding
the Role of the Information Coordination Center
07/22 Year 2000 & Global Corporations: "Will the Bug Bite Big Business?"
07/15 State and Local Government Preparedness
06/22 Federal Y2K Spending - Joint Hearing with Senate Appropriations
06/10 Y2K and Healthcare: "It's Time for Triage"
05/25 Community Y2K Preparedness: "Is There News We Can Use?"
05/10 Field Hearing: "Will Y2K and Chemicals Be A Volatile Mix?"
04/29 911 and Y2K: "Will The Call Be Answered?"
04/22 Year 2000 and Oil Imports: "Can Y2K Bring Back the Gas Lines?"
04/14 "What's Next for Those Who Missed the March Deadline?"
03/11 Y2K in the Courts: "Will We Be Capsized by a Wave of Litigation?"
03/05 International Year 2000 Issues: "Will the World Be Ready?"
03/02 The Food Industry and Y2K: "Starving for Attention?"
さて、昨年来の同委員会の活動については、3月の「2000年問題のインパクト分析」と題す る報告書にまとめられているが、その第2弾が、2000年1月1日まで、あと100日に迫った9
月22日に発表されている。「Y2K調査100日前報告(Investigating the Year 2000 Problem: The
100 Day Report)」(http://www.senate.gov/~y2k/documents/100dayrpt/)と題する288
ページに及ぶ報告書である。この発表に当たって、ベネット議長は「国家的なカタストロフィ ーは起きないが、ヘルスケアなどに問題が残っており、地域的、散発的なY2K問題が起きる可
能性が高い。」としている。
報告書の概要
Y2K問題は12月31日の深夜に実際に何が起こるかわからないという非確実性のために、世 界の終末を思わせるような尾ひれがついたり、あるいは逆に軽視しすぎる向きもあるが、どち
らも正しくはなく、むしろ対応の状況に応じて地理的にも規模的にも散発的に問題が起きて、 悲劇ではなく不便を生じるものとなるだろう。過去14ヶ月、企業も国も真剣にこの問題に取り
組んできたが、未だに対応が十分でないところもあり、ぎりぎりまで対応を続けると同時に、 危機管理の努力も高める必要がある。米国のY2K対応状況への自信が高まるに連れ、国際的な
対応状況への関心が高まってきたが、いくつかの重要な貿易パートナーの国々の対応が間に合 わず、重大なディスラプションを起こす可能性は否定できない。
全体的なオブザベーションは以下の通り。
- ユーティリティ、通信、運輸などの最もクリティカルとされていた分野は、過去8ヶ月で 大きな進展を遂げたが、ヘルスケア、地方政府、小企業、教育の分野に問題が残っている。
- Y2K対応期限について、石油ガス会社8000社のうちの500社、原子力発電所103箇所の
うちの30箇所が9月末日以降に設定しているなど、対応が間に合わなくなる恐れがあるも のもあり、コンティンジェンシー・プランの重要性は益々高まっている。
- Y2K対応状況の評価は世界的にも自己評価によるところが主流であり、信頼性もまちまち であるが、過度な楽観を生んでいるかもしれないことに注意を要する。
- Y2K情報公開法や証券取引委員会(SEC)の要請などにより、企業の情報公開は進んでは 来たが、未だに訴訟などを恐れ、リラクタントなところが多い。
- 国家的な緊急事態への対応については緊急管理庁(FEMA)での準備がほぼ整っているが、 地方レベルでの進展状況はまちまちである。Y2K
Information Coordination Center (ICC)が国全体のY2K問題のモニターをすることになっているが、ICCの機能は完全に
は決まっていない。
- 米国にとって経済的にも関係の深いいくつかの国々(ロシア、中国、イタリア、産油国の 一部)でのY2K対応状況は不十分であり、それらの国々でのY2K問題が、リセッション、
失業、国家的支援の要請などの形で米国に押し寄せる恐れもある。
- Y2K対応の段階で、テロリズム、産業スパイなどがシステムにトラップ・ドアやロジック 爆弾を仕掛けた恐れがあるなど、米国のサイバー・ボルネラビリティへの対策に焦点を当
てる必要がある。
日本の対応状況についての記述(177ページ)
日本は米国に次いで技術への依存度が高い国であり、米国の貿易パートナーとしての重要性 もあって、委員会としてはその状況に関心を持ってきた。日本は米国や他の先進国に比べ、対
応の開始が約1年(98年9月の行動計画を指して)遅れたが、この6ヶ月の目覚しい進捗によ り、米国に次いで対応が進んでいる。ヘルスケアと中小企業の分野での遅れに関心が当たって
おり、中小企業での問題は日本の企業を通じて米国企業にも悪影響を与える恐れがある。委員 会としては、日本ではあと100日の間に成すべき多くのことがあること、キャッチアップして
きたことで今後の対応に間違いを起こしがちになるのではないかという点に関心を持っている。
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