2000年3月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

米国におけるアプリケーション・サービス・プロバイダーの現状 -4-


2. サービス企業

@ Breakaway Solutions(www.breakaway.com
1992年にボストンで生まれた“Full Service Provider of eBusiness”の企業で、コンサルティング、システム・インテグレーション、アプリケーション・ホスティングを3本の柱としている。Packaged Application Hostingとしては、Clarify社やOnyx Software社のCRMアプリケーションなどを提供している。99年の全売上高は2,540万ドルで、1,040万ドルの損失を計上。ASPの売上は第4四半期で全体の12%と言うことである。


A EDS(www.eds.com
99年の売上高が185億ドルというような企業を上述のような、企業と並べて論じることはできないが、ちょうどこの稿の締切りの2月29日に、EDSは「Web Computing Suite of Services」の提供を開始すると発表した。これはIT企業に対して、ウェブホスティング、セキュリティー、ネットワーク・サービス、アプリケーション・サービス・プロビジョニングなどを包括して提供するパッケージのようである。アプリケーション・サービス・プロビジョニングについては、EDSは先行して、エンタープライズASPとして、通常のASPサービスを、またホールセールASPとして、ASPとなるためのソリューションを提供してきている。


B IBM(www.ibm.com
IBMについては、そのASP戦略が多岐に亘っている。世界最大のITサービス企業であるIBM Global Services は従来からアプリケーションのレンタルを行ってきているし、現在のサービスのメニューの中でも、ASPとは名をうっていないまでも、ありとあらゆるアウトソーシングができることになっている。加えて、99年10月26日に発表された「Service Porviders for e-business」のイニシアチブで、その戦略のほぼ全貌が明らかにされている。中心は「ASP Prime Support for Developers」で、最近買収したSequent Computerの@Readyプログラムをベースに、ISVが自らのアプリケーションをASPで配布できるようにIBMのサポートを受けながら調整できるようにするというもので、IBMのAS/400やRS/6000プラットフォームを活用した開発センターを2箇所設置している。他に、Lotusが「Lotus ASP Solution Pack」を発表し、また、「Hosting Advantage」と呼ぶサービス・プロバイダーの信頼性などを評価するプログラムなども含まれている。


3. アプリケーション・ベンダー

@ Oracle(www.oracle.com
オラクルは99年10月5日に、98年末から実験的に進めてきた「Oracle Business OnLine(OBL)」(www.oracle.com/businessonline)の大々的な発表を行っている。この席でCEOのLarry Ellison氏が同社のASP戦略について明確に語っている(この様子はウェブ上(http://webevents.broadcast.com/oracle/bol/webcast.html)で見られる)。これによれば、OBLは既に30社、2,000人のユーザーをもつ最大のASPとも言え、これをさらに拡大していくために外部の中小システム・インテグレーターとの提携や、BT、Exodus、Bell Canadaを優先サービス・プロバイダーとして選び、さらに他のISVのアプリケーションも配布すべく提携をしている。Ellison氏は、オラクルのソフトウェアのユーザーへのライセンスは従来通りで、それをユーザーが自分のコンピュータで使うか、オラクルのコンピュータで使うかの違いであって、ビジネスモデルは変わらないと強調している。


A SAP AG(www.sap.com
SAPは99年5月から、mySAP.com(www.mysap.com)と呼ぶオープンなコラボレーティブビジネス環境を提供する中で、アプリケーション・ホスティングもその一要素として提供してきた。しかし、昨今のASPへの急激な要請を踏まえて、2月24日、SAPはmySAP.comのこの要素を拡大させて、独立したASP企業(名称は未定)を4月に発足させると発表している。


4. ネットワーク・プロバイダー

@ Qwest Communications(www.qwest.com
長距離通信大手のQwestは、99年6月、KPMGと合弁企業のQwest Cyber.Solutions LLC(www.qwestcybersolutions.com)を立上げ、ASPに本格参入している。Qwestのネットワーク及び10箇所のCyberCenterと、KPMGのコンサルティングとソフトウェア・インテグレーション技術を組み合わせて、SAP、Oracle、Siebel、PeopleSoft、AribaなどのERP、CRMなどを提供しようとするものである。長期契約ベースで当初4億ドルの売上げを目指している。

また、Qwestは「Q.ASP Program」を立ち上げて、システム・インテグレーターやISVがASPとなるためのネットワークを提供するサービスも開始している。


A AT&T(www.att.com
AT&Tも2000年1月27日に、「Ecosystem for ASPs」と呼ぶネットワーク・サービスのプラットフォームを発表した。全米26箇所のデータセンターと高速ネットワークを提供し、ASPのネットワーク部門を受け持つだけでなく、コンテンツのインテリジェントな配布や顧客のデータの安全な貯蔵と管理などのサービスも提供する。

なお、2月18日には、USiがこのEcosystemを利用するとの発表を行っている。自前のデータセンターとネットワークだけでは、事業の拡張に限界があると見たのであろう。

 

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