2000年3月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

米国におけるアプリケーション・サービス・プロバイダーの現状 -3-


 さて、それでは主要なASP企業の概要を見てみることにするが、その前に全体の企業の動向をつかむ上で、インターネット・リサーチ・グループが調査した99年12月中旬の時点でのASPの市場シェアを参照してみよう。この調査はASPの中でも同グループの分類に言う、Full Service Providers (FSPs)とService Aggregators (SAs)という、フルサービスを提供するASPを対象として、それらが持つ顧客数を基にシェアを割り出している。グラフに見るように、USinternetworkingが全体の34%の顧客を占めているとなっているが、この調査では顧客数そのものが示されていないが、USi社の資料では顧客数が約100社程度となっているので、全体としてもが顧客数は高だか300社程度と推定される。


Market Share By Customer


 さて、これらの主要なASPなどの最近の状況について見てみよう。


1. 純粋なASP

@ USinternetworking(www.usinternetworking.com
 メリーメリーランド州アナポリスに本拠を置く、1998年1月設立のASP。CEOのChristopher McCleary氏はウェブホスティングのパイオニアであるDIGEXの前CEO。IMAP(Internet Managed Application Provider)と名付けたソリューションでPeoplesoft社やLawson社のERP(Enterprise Resource Planning)、Siebel社のCRM(Customer Relationship Management)、Broadvision社やMicrosoftのEコマースなど幅広いアプリケーションを提供しており、ワンストップサービスを売り物にしている。データ・センターも従って、北米に2箇所とアムステルダムと東京に自前で持っている。この2月にサービスをネットワーク上で提供するための独自のプラットフォーム、USiGSP(USi Global Services Platform)のVersion 2を発表したが、これらのネットワークのインフラにより、サービス・レベルで99.99%まで保証できるとしている。

 USiの資料の中に、従来の自前のITインプリメンテーションとASP利用の価格比較が載っており、興味深いのでここに掲げておく。


USi’s Value Proposition

Traditional Implementation
IMAP Service
 
License
$180,000
Included
Hardware
50,000
Included
Implementation
480,000
Included
 

Total Investment

$710,000
None
 
Maintenance
$3,000
Included
Disaster Recovery
4,000
Included
Bandwidth
2,000
Included
Operations
17,000
Included
 
Total Monthly
$26,000
$36,000
 
Time To Benefit
6 months - 2 years
1 - 3 months


なお、同社が市場価値で5億ドル程度の企業をターゲットにしているというので、何 故かと質問をしてみたところ、それ以下の小企業ではASPといえどもコストが高すぎ、大企業はカスタマイゼーションのニーズが多くて費用対効果が悪いからと言うことだった。

同社の99年の売上高は3,550万ドルであったが、1億330万ドルの損失を計上している。99年後半に急激に陣容も拡大し、1,000名(うち700名が技術者)規模になったので、やむを得ないことと思われるが、2000年は売上高も3〜4倍にできる見通しであり、あと2年ぐらいでは黒字化ができると見ているようである。


A Corio(www.corio.com
Jonathann Lee氏(Chief Strategy Officer)が98年9月にシリコンバレーで起業したASPで、2ヶ月後には、最初の顧客としてExciteを獲得している。米国内に11箇所の支社を持っている。ネットワークとデータセンターの部分は、Concentric Network とExodus Communicationsに運営を任せているので、サービス企業から参入したASPのような形態となっているが、最初からASP企業として生まれているので、純粋ASPと分類しても良いと思われる。

同社のCIE(Corio Intelligent Enterprise)と名付けられたスイートは、PeoplesoftとSiebelのエンタープライズ・アプリケーションを中心に提供するものである。最近ではCommerce OneのEコマース・アプリケーションなどの提供も始めている。未上場のため、同社の売上等は明らかになっていないが、シリコンバレーのベンチャーキャピタルのほか、PeoplesoftやSiebelを初め、この1月にはMicrosoftも1千万ドルを投資するなど、多くの投資家の注目を集めている。


B FutureLink(www.futurelink.net
1996年にカナダで設立され、現在はカリフォルニア州アーバインに本社を持つ、NASDAQ上場(98年1月)の企業。自らを“The Computer Utility Company”と呼び、顧客が望むどのようなアプリケーションも、まるでユーティリティー企業のように定額で提供するとしている。ASP(同社はApplication Hosting Servicesと呼んでいる)に加え、Application Hosting Platformsと呼ぶ、Citrix社のサーバー・ソフトウェアを用い、顧客企業が自社のリソースで自社内にあたかもASPを置いたかのようにするコンサルティング・サービスを行っている。サービス系の他のASPも同じようなサービスを提供しているが、これなどは、大企業が自社内で今後実施することが増えそうなソリューションだと思われる。

その他にも、コンサルティングやサポート、教育などを行っているが、全体としての規模は小さく、99年第3四半期(6-9月)の売上で160万ドル(ASPだけでは11顧客で10万ドル)で、760万ドルの損失を計上している。

 

←戻る | 続き→



| 駐在員報告INDEXホーム |

コラムに関するご意見・ご感想は hasegawah@jetro.go.jp までお寄せください。

J.I.F.に掲載のテキスト、グラフィック、写真の無断転用を禁じます。すべての著作権はJ.I.F..に帰属します。
Copyright 1998 J.I.F. All Rights Reserved.