|
2001年8月 JEITAニューヨーク駐在・・・荒田 良平 「米国における電子政府の進展」 |
(3) その他の事例 〜 ニュージャージー州など
〜 本稿では先進事例として州/地方政府の事例2件を紹介したが、州/地方政府の仕事は地域住民と直接の接点があるものが多いだけに、住民の関心も高く、電子政府に対する取り組みが進んでいる。私のアシスタントのMatthew Vetrini君によると、彼はニュージャージー州に住んでおり、住居のオーナーとトラブルを抱えているのだが、関連法令のキーワード検索(http://www.njleg.state.nj.us/html/statutes.htm)、業者登録記録の閲覧(有料)(http://www.state.nj.us/treasury/revenue/dcr/programs/corpinfo.html)、裁判所への申立て様式の入手(http://www.judiciary.state.nj.us/)、消費者保護局への苦情申立て(http://www.state.nj.us/lps/ca/ocp.htm)などをインターネット経由で行なっているという。 もちろん、ニュージャージー州は独自の電子政府戦略である「ニュージャージーIT戦略計画」(http://www.state.nj.us/cio/stratplan/strategicplan.html)を策定しているし、例えばニューヨーク市のレベルでも「ニューヨーク市IT戦略」(http://www.nyc.gov/html/doitt/pdf/itstrategy.pdf)を策定して電子政府を推進している。 5.
電子政府推進のための教訓 「E-Government Act of 2001」の審議過程で、EDS社副社長のBarry Ingram氏がITAA(米国情報技術協会)の代表として、2001年7月11日に上院のGovernment Affairs Committeeで証言(http://www.itaa.org/es/egovact01.pdf)を行なっている。この証言を読むと、もちろん法案の必要性を訴えその成立を支持しているのだが、産業界の電子政府に対する期待−すなわち電子政府を単なるインターネット関連の取り組みに終わらせず、真に政府の業務プロセスを改善し国民や産業界に対しより良いサービスを提供するものにすること−が窺える。証言の中で同氏は、電子政府のための教訓10か条を挙げているので、以下に紹介しておこう。
@ 電子政府を成功させるためには、トップのリーダーシップと支持に基づく財政的裏付けと周囲からの注目が必要。 A 省庁間にまたがる標準化が不可欠。 B オンラインでサービスを提供するための技術とインフラの強化が必要。 C 拡張性に配慮すべし。 D プライバシーとセキュリティが問題になる前に対策を行なえ。 E 既存の業務プロセスを再構築(re-engineer)するだけでなく、可能なら新しく作り直す(reinvent)べし。 F 電子政府による新しいサービスの利用を促進するため国民と産業界にインセンティブを与えろ。 G デジタル・ディバイド対策のため引き続きカウンター・サービスも必要だが、新技術や業務プロセス改善で補強できる。 H 新しいオンライン・サービスを強力に推進すべし。 I 新しい財政的仕組みを採用し民間セクターとの新しい協力モデルを確立すべし。 おわりに 今回の駐在員報告は少し長くなってしまったが、それでも例えば電子政府推進のための環境整備(PKI、セキュリティ、プライバシー等)など書けなかった話は多い。これらは、一般の電子商取引とも重複する課題なので、別の機会に譲ることにしたい。 結局、電子政府とは何なのだろうか?米国の産業界の発想は、「民間企業の競争力強化で成功した”ITソリューション”のアプローチを公的部門にも適用する」の一語に尽きるであろう。この発想からすれば、「ITとマネジメントの双方に長けた強力な連邦CIOの創設」といった話は、ごくごく当たり前の話である。 また、私は個人的には、公的部門の情報・サービスはITネットワークのキラー・コンテンツでありキラー・アプリケーションであると考えている。電子政府の進展は、一層のインターネット普及やブロードバンド化を牽引する効果があるだろう。 日本でも「e-Japan戦略」などに基づいて、電子政府の実現に向けた取り組みが急速に進められている。その実現に期待したい。 (了) 本稿に対する御質問、御意見、御要望がございましたら、arataryohei@jetro.go.jpまでお願いします。 | 駐在員報告INDEX|ホーム | J.I.F.に掲載のテキスト、グラフィック、写真の無断転用を禁じます。すべての著作権はJ.I.F..に帰属します。 |