2002年4月  JEITAニューヨーク駐在・・・荒田 良平

「米国におけるB2B電子商取引の動向」(その2)


(3)          エクソダス・コミュニケーションズ(Exodus Communications, Inc.) 〜 ウェブ・サイトやアプリケーション・サーバーのホスティング

<企業プロファイル>

■所在地: カリフォルニア州サンタクララ

URL: http://www.exodus.com

■設立: 1994年

■最高経営責任者: L. William Krause会長兼務

■企業形態: 連邦破産法11条適用申請(事業は継続中)


<業界背景と沿革>

インターネットの普及にともない、ビジネス向け大容量データ転送と大規模ウェブ・サイトのホスティング需要が高まり、1990年代末からIDC(インターネット・データ・センター)業界が賑わった。各企業が自社でデータ・センター設備を整えるのは経費がかさむが、IDCを利用することでその経費を抑えられるばかりか、比較的安価な価格で高性能な環境整備を可能にする。同業界ではアプリケーション・サーバーの管理、維持、最新化といったサービスを包括的に提供するホスティング業者も多く、エクソダスはその中で2001年まで第一人者的な位置に存在していたと言える。

 エクソダスは、インドからの移民であるK.B. ChandrasekharB.V. Jagadeesh1994年に設立した。当初はウェブ・サイトのホスティングやインターネット接続業で中堅規模にとどまっていたが、ウェブ・サイトのホスティング(いわゆるサーバー事業)に事業の中核を据え、米国内主要都市44ヵ所と世界主要都市にサーバー拠点となるIDCを建設して急成長を遂げた。シェア拡大の戦略としてグローバル・オンライン(Global Online)や業界最大手の地位を確立させたグローバル・センター(Global Center)を買収し、数多くの企業と業務提携を結んだ。同社の主な顧客にはヤフー(Yahoo!)、eベイ(eBay)、CBSスポーツライン(CBS SportsLine)、グーグル(Google)、コンパック・コンピュータ(Compaq Computer)があり、その数は4,000社以上にも及ぶ。

調査会社インターナショナル・データ・コーポレーション(IDC)は、米国のホスティング市場は2001年の年間70億ドルから2004年には同248億ドル規模へと急成長すると予測している。しかし、ベル・サウス(Bell South)といった一部の地域電話会社のIDC事業部門を除き、景気後退とネット・バブル崩壊のために同業界でもエクソダスをはじめ、大半の企業が苦戦を強いられている。

帯域幅サービスとグローバル・ネットワークを提供するレベル3コミュニケーションズ(Level 3 Communications)も、需要激減を理由に2001年に25%の人員削減を発表した。また、光ファイバーによるネットワークでインターネット、データ、マルチメディア、ボイス・サービスを米国150都市に提供するクエスト・コミュニケーションズ・インターナショナル(Qwest Communications International)も、2001年度第2四半期に33億ドルもの記録的赤字を計上した。ワールドコム(WorldCom)は65ヵ国で運営しているが、データ・センター建設計画を全て中断した。

 同業界の当面の大きな課題は、経費削減と運転資金の調達で、その解決策の選択肢として合併、吸収、買収の道を模索する企業がさらに増加すると思われる。また現行サービスにより多くの付加価値を与える傾向も見られると予測され、生き残りをかけた熾烈な闘いが激しくなることは必至と思われる。

こうした中、エクソダスはホスティング市場で大手の、またIDCでは世界最大手の位置に付けていたが、2001年第1四半期(13月)に11,830万ドルの現金純損失を発表、次いで第2四半期にも14,000万ドルの損失、また、2001年度の現金純損失総額は5億ドルになると報告した。一時は17四半期連続2桁成長を達成するほどの優良企業にのし上がり、20009月には62.37ドルの株価をつけた。しかし、20018月下旬以降には株価が1ドルを割り込み、2001926日に連邦破産法第11条(日本の会社更生法)の適用を申請するに至った。破産申告を行った時点の株価はわずかに17セントだった。負債総額は45億ドル。20021月現在、顧客へのサービスは以前と同様に続けられている。20011130日、同社は、世界的通信事業者ケーブル・アンド・ワイヤレス(Cable &WirelessC&W)にエクソダスの業務と資産の大部分を約57,500万ドルの現金および特定負債引き受け約18,000万ドルで売却することに最終的に合意したと発表している。


<ビジネス・モデル>

エクソダスの主要事業は、1)ウェブ・サイト・ホスティング、2)ネットワーク・サービス、3)ウェブ・サイトの管理・運営、4)周辺の専門サービス、という4部門に分けられる。その中で顧客企業のためのウェブ・サイト・ホスティングが最大のサービスとなっている。

1)ホスティング事業では、顧客企業のeコマース事業やウェブ・サイトをサーバーで走らせ、使用帯域幅や周辺サービスの項目によって月間使用料を徴収する。通常の場合、ほとんどの契約期間は1年間。同社のIDCは、設備の面で企業顧客向けハイエンド・サービスに対応しうる規模と質で、大口のeコマース・サイトや大企業のウェブ・サイトを次々に顧客に取り込み、年中無休の管理体制でホストする。

2)ネットワーク・サービス部門では、主に、帯域幅サービス、複数回線LAN接続、インターネット接続というサービス商品を提供している。

 ・ 広帯域サービスでは、ウェブ・サイトを運営する企業やISP業者が回線混雑の見積りを予測できない際、このサービスを選びエクソダスの回線帯域幅を広く予約し、利用度によって基本料金を追加して支払う。

 ・ 複数回線LAN接続では、回線混雑が急増する顧客のために、不通を防ぐ目的でLANに複数回線による接続を提供する。

 ・ インターネット接続は、ISP業者を顧客にした専用サービスで、専用サーバーに対する固定料金と(使用帯域幅による)変動料金の他、T-1回線固定料金によるインターネット接続サービスを提供する。

3)ウェブ・サイト管理・運営部門では、顧客のウェブ・サイトを監視し、非常が生じた場合に即時対応する。さらに、ウェブ・サイトの各種情報の保全やサイトに使用される各種システムの保守を提供する。

4)専門サービスでは、顧客のウェブ・サイトと顧客の競合サイトを比較検討し、顧客サイトに競争力をつくけるコンサルティング業務がサービスの中心である。また、効率的なサイト管理・運営も併せて検証する。さらに、顧客サイトの各種プログラムを管理したり、あるいは顧客サイトに導入されるアプリケーションを最大限に活かすためのコンサルティングも提供する。


<失敗の原因>

 クラウス会長は経営悪化の原因を「市場占有率の拡大に走りすぎ、利益を犠牲にした。また、ドットコム企業の相次ぐ倒産などバブル崩壊を予測できず、過剰投資に陥った」と説明した。さらに同社の破産法の書類には次のような破産の主因が挙げられている。

 ・ 需要拡大を見込んでいたため、19996月には60万スクエア・フィートだったIDCの収容能力を20019月までに560万スクエア・フィートにまで拡張したが、需要が減少してしまった。過剰な先行投資がほぼ直接的原因と言える。

 ・ 米国の景気後退による顧客の減少。

 ・ ドットコム業界への新規参入者の減少。

 ・ 経済的に不安定な顧客の切り捨て。

 ・ 20011月に行ったグローバル・センター・ホールディングの買収が利益につながらなかった。

大口顧客だったヤフーをはじめ、ブリティッシュ航空(British Airline)、ゼネラル・エレクトリック(General Electric)の経営不振もエクソダスの収入を減少させた。さらに2001年中盤からホスティング市場の主要企業IBMとダイジェックス(Digex)との競争が激化していた背景も無視できない。


<課題と今後の展望>

 ヤンキー・グループ(Yankee Group)のアナリスト、キャリー・ルイス氏はエクソダスが生き残れるかどうかは、4,000社にもおよぶ顧客をどのように維持するかにかかっていると説明した。競合会社であるクエストやUUネット、ATT、スプリントはエクソダスの顧客を獲得しようと今まで以上に積極的に勧誘を行うのは明白である。中でもクエストとワールドコムはエクソダスが破産申告をしてからサービスの需要が増えたと述べている。従って、会社更正の手続きの中で、顧客をどこまで逃がさずに増やしていくかとコスト削減が課題の骨子となる。

破産法適用を申告した翌日、エクソダス役員は大口顧客に個人的に連絡を取り、今まで通りのサービスを提供すると約束した。ヤフーをはじめとする顧客らは正式発表としてエクソダスとへの依頼を継続すると述べている。しかしオンライン・ニュース・サイトのCNETwww.news.cnet.com)によると、顧客らは他のホスティング企業への乗り換え、もしくは万が一に備えて複数のホスティング業者を利用しようと考慮している。ただし、利用者側でもデータ・センター切り換えには痛みがともなう。そのため、具体的対策を練り終わるまではエクソダスを利用し続けようと考えている顧客が多いと予測され、従ってエクソダスにとっての本当の難局は今年に本格化するだろう。

 同社はGEキャピタル(GE Capital)からDIPファイナンスとして最大2億ドルを受ける融資承認を取り付けたと発表した。同資金は申請後の運転資金および買掛金と従業員への支払いに用いられるが、CWへの資産売却と合わせても、今後の再建・運営費用には十分ではない。そのため同社は未だ更なる融資を待っている状態である。


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