98年3月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

米国産業におけるIT活用の動向(前半) -4-


事例(2)
マクダネル・ダグラス(McDonnell Douglas Corporation)
 97年にボーイングとの合併を決めた大手民間機・軍用機メーカー。本社ミズーリ州セントルイス。97年総売上138億ドル。97年IT予算総額(推定)3億1,800万ドル。

ITプロジェクト:在庫管理・仕入コーディネーションのためのエクストラネット(97年5月部分的に完成)

推定コスト:新規インフラ整備とエクストラネット導入のコストを合わせて500万ドル未満(インフラはエクストラネット以外のアプリケーションにも利用される予定)

技術内容
 クライアント/サーバ網用グループウェア・パッケージの「ロータス・ノーツ」を使用(現在ウェブベースの「ロータス・ドミノ」へ移行中)。エクストラネット機能と電子メール機能を持つ。主なハードウェアは、UNIX(AIX)システムを搭載したIBMのRS/6000サーバと、ウィンドウズNTを搭載したIBMのPC704サーバの2種類で、クライアントPCの機種は多様。ウェブサイトには、IBMのファイアウォール・システム「セキュア・ネットワーク・ゲートウェイ」を使用。イントラネットの導入は、マクダネル・ダグラス(MDD)の社員3名とロータス・コンサルティング(Lotus Consulting)が共同で実施。

プロジェクト概要
このエクストラネットは、3種類のアプリケーションによって構成されている。

1 デイリー・ディスパッチ・リスト
これは、MDDの各工場及び部品仕入先の工場にリンクされたワークフロー・アプリケーションである。サプライヤーはロータス・ノーツを使用して、MDD向け部品のそれぞれにつき、製造の進行状況や遅延につながる可能性のある要因(特殊な工作機械・原材料の必要性、より詳細な技術仕様の必要性など)を入力する。アプリケーションは、個別の遅延要因について、MDDの該当部署に対応を促す情報を自動的に転送するとともに(例えば技術仕様の追加については図面管理部門へというように)、MDDの在庫管理部門向けに遅延要因のデータをまとめたレポートを発行する。

2 ジャストインタイム原材料アプリケーション
上記のデイリー・ディスパッチ・リストをモデルに作られたもので、仕組みは同様であるが、入力される情報が、サプライヤーにおける原材料需要と調達の遅延可能性であるという点が特徴である。MDDは同様に遅延の可能性を取り除くための対応を行う。

3 検査告知板アプリケーション
サプライヤーが製造する部品の用意ができると、MDDの検査担当者に自動的に知らせるワークフロー・ソフトウェア。多くの検査予定を検査担当者の間で振り分け、スケジューリングを行う機能も持つ。

主な成果
 MDDの在庫管理部門は、同社が製造する航空機1機あたり18〜24ヶ月の製造サイクル毎に、500社のサプライヤーから供給される約80,000点の部品を管理しており、これらを段階的にイントラネットに移行させる計画である。まず、15の主要サプライヤーとの協力によって運用が開始されたが、現在1日およそ300件の遅延要因がリストされており、迅速な対応に役立っている。MDDは、将来300社のサプライヤーがエクストラネットに参加することを見込んでいる。

実施企業及び顧客へのメリット
 新システムの導入によって、MDDは部品調達のスケジュールがスムーズに組めるようになった。また、遅延の可能性もあらかじめ把握することで、製造への影響を最小限にするための手段を講じることができるようになった。従来は、1種類の部品納入が遅れたために製造プロセス全体がストップし、完成機の顧客から納期の遅れに関する了承を得なければならないことがしばしばであったが、エクストラネット導入後は、こうした大幅な製造予定の遅れはほとんどなくなったという。また、サプライヤーの側も、期日通りの納品に向けてMDDと協力することができるようになったことを歓迎している。システムを利用しているサプライヤーの一つであるワトソンズ・プロファイリング(Watson's Profiling)社の場合、これまで1日に10回も進行状況を報告するファックスをMDDに送っていたが、エクストラネット導入により、管理負担は大幅に軽減された。

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