98年4月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

米国産業におけるIT活用の動向(後半) -3-


事例(2)
シカゴ・タイトル・アンド・トラスト
(Chicago Title & Trust Company)

 不動産取引向けの権利書検索と各種保険サービス事業者。本社イリノイ州シカゴ。96年営業収入13億ドル。(IT予算非公開)

ITプロジェクト: 顧客である不動産専門弁護士を対照にしたエクストラネット・サービス「キャッスルリンク(CastleLink)」(97年2月開始)

推定コスト:非公開

技術内容
 メインフレームに作成された旧式データベースをマイクロソフトSQLサーバにリンクすることで、情報検索サービスを提供。検索リクエストの結果は、SQLサーバ上で一旦マイクロソフト・ワード形式に変換され、さらにウェブ文書標準のHTML形式にフォーマットされてウェブサーバから提供される。

プロジェクト概要
 キャッスルリンクは、もともとシカゴ・タイトル・アンド・トラスト(CT&T)のサービスやコンテンツに対する注文を受け付ける電話システムであったが、これを、エクストラネットやEDIからもアクセスできるようにしたものである。

 CT&Tの主要顧客である不動産専門弁護士は、専用のパスワードを使って同社のウェブ・サーバにアクセスすることで、不動産取引に良く使われる各種の法務書式や契約書の雛形をオンラインで入手できる。また、同じウェブサイトから権利書保険加入の手続を行ったり、権利書データベースの検索サービスを利用したりすることが可能である。登録を行った顧客は、通常のコンテンツ代金やサービス手数料を支払うだけで、エクストラネットへのアクセスに追加料金を支払う必要はない。

主な成果
 キャッスルリンクのエクストラネットは、現在120人を超えるシカゴ地区の不動産専門弁護士によって利用されているほか、カリフォルニア、オハイオの両州でも利用できる。従来、弁護士がCT&T社の提供する情報や書式を利用するには、手間のかかるプロセスが必要であった。まず、電話で注文を行い、配達(クーリエ)サービスでハードコピーを受け取って、秘書に必要事項をタイプさせなければならなかったからである。しかし、キャッスルリンクのオンライン・サービスは、弁護士がウェブサイトで必要な情報を入力するだけで、それらを自動的に記入した書類が作成される仕組みになっており、書類作成に伴う手間や時間が大幅に削減されるようになった。

実施企業及び顧客へのメリット
 以下は、キャッスルリンクの効果を示す、ある顧客の実例である。この弁護士はかつて、取り扱う不動産取引1件毎にCT&Tからの書式入手と必要事項の記入を処理するために、フルタイムの秘書を雇わなければならなかった。しかし、キャッスルリンクのサービスが始まったことで、弁護士自身が簡単に書式作成の作業をこなせるようになったため、年間35,000ドルの人件費が節約できることになった。また、ラップトップPCを使い、必要に応じて依頼人のオフィスからキャッスルリンクにアクセスすることもできるため、ペーパーワークのために一日の大半を事務所で過ごす必要もなくなった。

一方、CT&Tにとっても、キャッスルリンクによって顧客との関係をより緊密なものとすることができたうえ、同社の主要商品である情報リソースの管理が容易になるというメリットがあった。

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