98年5月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

NGI及び
インターネット2の現状 -2-

NGIのこれまでの経緯

NGI構想は、クリントン大統領の2期目をかけた選挙直前の96年10月に発表された。クリントン/ゴア政権の看板政策の一つともなってきたHPCC(High Performance Computing and Communications)計画がその時点で5年の計画期間を終え、次の計画が求められていた時期である。21世紀への架け橋としての政権を自認するクリントン/ゴアにとっては、情報通信の分野で21世紀も引き続きアメリカのカッティング・エッジを維持するというNGI構想は、とっておきの政策なのである。

96年10月時点で発表された計画自体は、目標として3つ掲げられているうちの最初がネットワークの接続で2番目がネットワーキング技術の開発と、順序が違っていた点以外は、後で説明する現行の計画と大きな差異はないものであった。もちろん構想だけで、実行計画はこの段階では策定されていない。 その後、97年2月の大統領年頭教書演説でも強調され、98年度予算要求としては、HPCC計画の後継計画のCIC(Computing, Information and Communications)計画11億ドル中のLSN(Large Scale Networling)2.8億ドルのさらに内数としてNGI計画1億ドルが提案された。2月末には「High Performance Computing and Communications, Information Technology, and the Next Generation Internet(HPCC, IT & NGI)」に係る大統領諮問委員会(HPCCの時代のものにNGIが付け加わった、図2参照)(ケン・ケネディ氏(ライス大学並列コンピュテーション研究センター所長)と、ビル・ジョイ氏(サン・マイクロシステムズ副社長)の共同チェア)を発足し、6月を目途にCIC/NGI計画についての提言を行うこととされた。 この段階で、行政府は議会における予算承認について、相当楽観視していたようである。

NGI計画がクリントン/ゴア政権が好んでスピーチにも使い拍手が受けられるプロジェクトであり、超党派の支持も得られていると見られたからである。ところが、予算承認の最初の関門である下院科学委員会は、この段階で出されていたドラフト・コンセプト・ペーパーだけでは計画が不明瞭であるとして審議を5月か6月まで延ばすという決定をしてしまった。

6月3日に開催された上院の商業、科学、運輸委員会の科学、技術、宇宙小委員会でも、過疎州出身議員(モンタナ州、ノースダコタ州、オレゴン州、アラスカ州等)からNGIが農業/人口過疎州の実質的な参加を伴っていない点を中心に批判がなされた。その他、NGIが多数機関にまたがる計画にしては、中央の調整、運営体制が弱体ではないか、あるいはネットワークの構築に力点があるように見え、これでは企業補助金に過ぎないのではないか、等々が問題点として上がっていた。

7月末にクリントン政権はようやくコンセプト・ペーパーの改訂版と詳細な実行計画のドラフトを提出した。これらのペーパーでは批判に応え、「ネットワークの接続」を「ネットワークのファブリック(織布)」と変えて目標の2番目に下げるなどの修正が成されていたが、夏休みに入ってしまい、下院科学委員会が公聴会を開催したのは9月10日になってからであった。この公聴会では基本的にはNGIを支持する立場で議論が終始したものの、もはや予算承認の時期は逸してしまっており、この段階では下院では7,800万ドル、上院ではわずか3,500万ドルの承認しか成されていなかった。

←戻る | 続き→


| 駐在員報告INDEXホーム |
コラムに関するご意見・ご感想は hasegawah@jetro.go.jp までお寄せください。
J.I.F.に掲載のテキスト、グラフィック、写真の無断転用を禁じます。すべての著作権はJ.I.F..に帰属します。
Copyright 1998 J.I.F. All Rights Reserved.