98年5月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

NGI及びインターネット2の現状 -3-

ジム・センセンブレンナー委員長(共和党、ウィスコンシン州)は、そもそも計画が出されたのが遅かったことを問題視し、この少ない予算で98年度に何をするのかが明確でないとして事務局を叱りつける場面もあった。しかし、その後9月から10月にかけての強力な対議会ロビーイングにより、DOEこそ予算承認が受けられなかったものの、全体で9,500万ドルの歳出承認を受けられることになり、NGIはやっと形を整えることができたのである。

11月4日に開催された上述の上院科学、技術、宇宙小委員会の公聴会では、大統領の科学技術顧問でOSTP(Office of Science & Technology Policy)局長のジョン・ギボンス氏は、NGIのテストベッドは新しいインターネットそのものを構築するのではなくその技術開発と実証を行うものであること、各省庁間の交流が重要でその意味で中央の組織はうまくマネージできていることなどを中心に証言した。

さらに参加各省庁から、予算が絞られたことに伴う研究開発の重点について説明がなされた。DARPAはNGIの3つの目標の前2つに絞るとし、また予算が獲得できなかったDOEは、99年度から正式に参加するとしつつ、同省内での高性能コンピュータ・ネットワークの研究をNGI向けに弾力的に振り向けるとした。NSFは歳出の裏付けを与えられなかったが、ネットワーク・ソリューションズ社にドメイン・ネームの登録を痛くしているところから上がる収益(本来の使用目的がインターネットのアップグレード)の一部を98年度のNGI研究費に回すとした。(なお、この予算流用について民間から訴訟が起こされ、98年4月時点でもNSFは支出が行えないでいる。)

NGI計画の初年度となる98年度は、以上のような経緯を経て何とかスタートすることができたが、休む間もなく99年度予算の獲得への動きが始まっている。98年1月27日の年頭教書演説では「…私はNGIの構築について、議会のもう一段の支持をお願いする。ご存じのようにそれはやや妨げられている(It's getting kind of clogged, you know.)。」とまでクリントン大統領は言っており、NGIへの決意の強さを物語っている。2月には予算要求に併せて「実行計画」の第2版が出されるとともに、NGI支援のための「1998年NGI研究法案」が上下院から相次いで提出されている。また3月には議員の啓発のためのNGIのデモンストレーションも開催されている。その他、NGIと後に述べるインターネット2に関する小さな発表まで、クリントン大統領かゴア副大統領の声明としてホワイトハウスから出されるなど、異例と言って良いほどの待遇がNGIには与えられている。

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