98年8月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

グローバル・エレクトロニック・コマース
フレームワーク発表から1年(前半) -1-

はじめに

昨年7月にニューヨークに赴任してきて最初に触れたのがクリントン政権の「グローバル・エレクトロニック・コマース」のフレームワークであった。その時も述べたように、このフレームワークではインターネットに係るほとんどの要素に焦点をあてていることから、この1年間の様々な米国内のインターネットに関する動きは、全てこのフレームワークに沿った活動であったとも言える。1年がだんだんと近づいて来るにつれ、大統領、副大統領の講演、議会の法制化の動き、連邦政府の報告、そして民間でのそれらに対応した活動などが、大変活発化してきている。今回は、錯綜してきてもいるそれらの活動について、中間作業とはなるが、整理をしてみることにしたい。

でもその前に、このフレームワークについてちょっとおさらいをしておこう。フレームワークは今後の政策策定のガイドとなる原則を示すとともに、Eコマースのキー・イシューに対する行政府の姿勢を明らかにし、さらに今後の国際的な交渉のマップを与えるものとされている。具体的には以下のような、行政府のEコマース促進のための5つの原則と、これに基づく9つのキーとなる分野における政府の提言を示したものである。

「5つの原則」

民間セクターが主導すべきである。
政府はEコマースに関する不必要な規制を回避すべきである。
政府の関与が必要な場合でも、それは商取引のための予見可能な、最小限の、首尾一貫した、簡便な法的環境を支援し、執行することを目指すべきである。
政府はインターネットの有する非集権的という特性を認識すべきである。
Eコマースはグローバル・ベイシスで促進されるべきである。

「9つの提言」

1 関税と課税 ; インターネットは、関税フリーの環境とされるべきであり、また既存の税を課す場合も国際的に整合の取れた簡便なものであるべきである。

2 電子決済システム ; この分野の商業的・技術的環境は急速に進化しているので、固定的な規制は避けるべきで、当面は経験の積み重ねをモニターしていくべきである。

3 Eコマースのための標準 ; 米国はEコマースの促進のための国際的な標準の開発を支援している。当該標準は、電子契約の政府承認の促進、電子サイン受容等の国際的ルールの整合化、国際商取引の紛争解決手段の開発、責任開示の基本ルールの設定、電子登記の利用合理化等に資するものとなる。

4 知的財産権の保護 ; インターネット上の商取引における知的財産権の効果的な保護のため、WIPOの著作権保護協定は批准されるべきであり、また行政府としてはデータベースの要素の保護の検討、GII構築に重要な特許権の保護の促進、トレードマーク保護の各国の差異から生じる問題の解決等に努力する。

5 プライバシー ; 行政府は民間セクターにおける自主規制的なプライバシー保護制度を支持し、自主規制や現行技術では不十分であれば、産業界と連携して開発を促進する。

6 セキュリティー ; GIIを安全で信頼できるものとするべく、行政府は産業界と連携し、信頼性の高い公開鍵暗号のインフラの開発を促進し、必要とされるセーフガードを提供する。

7 通信インフラと情報技術 ; 多くの国で通信政策により最新のデジタル・ネットワークの発展が阻害されており、米国として、国際的にそれらの競争障壁を除去すべく努める。

8 コンテンツ ; 行政府は、産業界の自主規制、コンテンツの格付け、あるいは不適当なコンテンツから子供達を守る技術の開発を支援し、さらに貿易相手国が非関税障壁ともなりかねないコンテンツ規制を導入しないような合意を取り付けるべく努力する。

9 技術標準 ; 政府ではなく、市場がインターネット上の技術標準やインターオペラビリティを決定すべきである。

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