●３．「ITワールド・コングレス’98」におけるデーリー商務長官の講演
6月22日に、ワシントン郊外のメリーランド州フェアファックス郡のジョージ・メーソン大学で開催された同コングレスでのデーリー商務長官の講演は、プライバシー問題が中心で、その他の項目については上述の4月の段階とそれほど変わっていない。ただ、私も同コングレスの聴衆の一人であったこともあり、関連する発言の要旨を示しておきたい。
1)プライバシー
プライバシーの問題は、Eコマースの成否を決める最も重要な問題。最近私は、本件に対する業界の取組みはあまりにスローであると指摘しているが、明日（6月23日）開催するプライバシー・サミットで、業界の善処について聞くことになっている。今朝、プライバシー・アライアンスのメンバーと会ったが、彼らの提案が子供のプライバシーに特別の関心を払っているところは評価できる。13歳未満の子供からは親の同意無しでは情報を集めないとしている。また、消費者が個人情報を使用しないことを拒否できることも認めている。ただ、彼らがこれらを実施していくための計画については9月15日まで時間が必要だと言ったのでこれには失望した。原則を明らかにしただけでは不十分で、消費者が信頼できるような形で、業界にこれを守らせていくのが大事なのだと言ったところ、彼らも了解した。いずれにしても、これは良い第一歩であり、その他にも例えばBetter
Business Bureauも今日、プライバシー・プログラムを発表することになっているし、TRUSTeは既に強力なプライバシー原則を採用し、実行していると承知している。
2)知的財産権
我々は著作権のある作品、音楽の実演、音楽の録音を保護するための国際的な標準を設定した二つの条約について議論をしてきた。上院は最近この実施法を99対0の投票により可決した。現在下院で審議中であるが、議会ができる限り速やかにこの作業を終えることを望んでいる。
3) 認証
認証を附した取引を実現するための技術は既に可能となっており、あと必要なのは法的なフレームワークである。欧州では詳細な法制を望んでいるようであるが、私の懸念はこの市場がどのような法が必要かとわかるまでには開発されていないのではないかという点である。従って、我々は電子的な商取引に対するぺーパー・ベースの障害を取り除くための国際的なコンベンションを提案しており、これによって法的な強制を受けている国境を越えた商取引に人々が参加することの権限を与えるものになる。我々は、他の国々が今月末に国連で議論される、このような努力に合意することを望んでいる。
4) 欧州のEコマースに関する指令
2月に欧州委員会が提案したEコマースに関する指令は刺激的であると考えられている。今朝、この問題についてバンゲマン委員と話すことができたのは良かったが、率直に言ってこの指令には多くの問題がある。この指令は産業界や市場のリードに任せると言うより、むしろより多くの政府による解決にトップダウンのマンデートを与えようと言うものだからである。10月にオタワでOECDによるEコマース大臣会合が開催されるが、その場で、課税、プライバシー、世界経済に与えるEコマースのインパクトなどの議論が成されることになっている。
5) 暗号政策
私はクリントン大統領が掲げる、法執行、国家安全、プライバシーと商業的な関心との間のバランスをとるというゴールを全面的に支持しているが、どのようにそのバランスをとるかについての合意には未だに達することができない。過去2ヶ月、我々は産業界、プライバシー擁護団体、そして法執行当局のリーダーたちと、このバランスのとれた解決策を見いだすために議論を重ねてきた。その意味で、ジャネット・リノ司法長官、ルイス・フリーFBI長官と産業界のリーダーとの会合が開かれたことは、この推進のために喜ばしいことであった。産業界と法執行機関が適切な解決策を見い出すために、さらに議論を続ける必要があり、我々は秋までにはこの合意に達成できることを望んでいる。
6) ドメイン名システム
今月はじめ、インターネットのアドレス・システムに今後政府が関与することを止め、民間の手に委ねるとの発表をした。10月までに新しいコーポレーションが民間で組織され活動を開始することを望んでいる。2000年までに彼らが全責任を負い、我々がリタイアする。
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