99年3月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

米国におけるハードウェア・ベンダーのソリューション・ビジネス戦略(後半) -3-


(4)ヒューレッド・パッカード ――新しい事業モデルを模索するハードウェアの名門

設立:1939年
売上高:429億ドル(1997年)
本社:カリフォルニア州パロアルト
純利益:31億ドル(同上)
従業員数:125,300

ソリューション・ビジネス部門概要
発行済株式時価総額:679億ドル
名称
エンタープライズ・コンピューティング・ソリューションズ機構
Enterprise Computing Solutions Organization
責任者
アン・リバモア(Ann Livermore)
全体的戦略
ソリューション・ビジネスでハードウェア販売をサポート
ターゲット層
大企業(特に外国企業)向けエレクトロニック・コマース

(注)98年(10月決算)の値では、売上高471億ドル、純利益29億ドル。

©Washington|CORE

(企業概況)
 近年、多くのハードウェア・ベンダーが収益の伸び悩みに頭を痛めているが、その中でヒューレット・パッカード(以下HP)は、90年代に入ってからも驚くほど着実な成長を続けている。現在同社は、IBMに次ぐ米国第2位のコンピュータ製造者であり、フォーチュン誌は95年から3年連続で「最も賞賛されるコンピュータ・メーカー」にHPを選んでいる。

同社の成功は、優れたリーダーシップと高いコスト効率を併せ持った経営体制に依るところが大きく、その事業モデルは業界の模範とされている。利益マージンの低いハードウェア業界にあって、優れた人材活用法を通じてユニークな製品を作り出すHPは、常に好調な業績を保っている。しかしその一方で、市場の競争が激化していることを背景に、大掛かりな戦略の見直しや組織改変の必要性に迫られていることも確かである。

HPは、年商のおよそ8割をプロダクト販売によって上げている。そのおよそ半分がプリンターなど周辺機器の売上であり、残りが、PC、ネットワーキング機器、ハイエンド・コンピュータ製品などによって占められている。従って、近年ソリューション・ビジネスの比率を大幅に拡大したIBMとは異なり、HPのサービス収入の比重はそれほど高くない。

 さらに、同社の製品売上比率は過去数年間を見てもほとんど変化しておらず、HPの経営の柱がまだハード製造にあることを示唆している。しかし、社内での比率こそ低いものの、HPのソリューション・ビジネスは全世界のシステム・インテグレータ中第7位に相当する(IDC調べ)。また、ハードウェア・ベンダーの中ではIBMに次いで2番目にソリューション業務の規模が大きく、市場における重要性は非常に高いと言える。

図7:HP部門別売上

HPのソリューション・ビジネスは、97年に18億ドルの売上を計上した。同社の主な得意先分野は、小売・製造・金融で、中心的なサービスはコンサルティング、アウトソーシング、教育となっている。同社のサービス業務には、コンピュータの保守・サポートも含まれており、世界各地にレスポンス・センターやサポート・オフィスを設けている。

 HPは、ハードウェア・ベンダーの中では最も早くからマルチベンダー・サポートの方針を打ち出してきた企業として知られている。最近では、ソリューション・ビジネスを通じて従来以上に自社製ハードの売上を促進しようとする傾向も現れてきたと言われるが、いずれにせよ、HPのソリューション・サービスが高いレベルを誇っていることは疑いない。コンピュータワールド誌がユーザーを対象に行った満足度調査の結果、HPは大手システム・インテグレータ中、第5位にランクされている。

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