2.ニューヨークのシリコンアレー
まず、最初に地元のニューヨーク(以下NYと略す)から始めるのが適当であろう。NYのシリコンアレーは今や大変有名になってしまい、都市型IT集積地域モデルということで、日本からの視察の方々が引きも切らない。また多くの書物や文書で紹介されているので、今更紹介というのも何だが、ここからスタートしないと各論が始まらないので、やはり見ておくことにする。
(地域の特徴)
NY市のマンハッタンに位置するシリコンアレーは、1992年頃から、ソーホー、チェルシーやトライベッカ地区にニューメディア関連企業が現われ初め、その後マンハッタンの南部全体及びNY市の郊外に広がってきており、現在も著しい成長を見せている。従来、ソーホーやチェルシーの芸術家、エンターティナーの能力を活かしたマルチメディアのコンテンツ作りが中心であったが、現在ではコンテンツのみならず、Eコマース、サービス・プロバイダー等といった活動にも広く進展している。
ニューヨークのシリコンアレー
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既存の産業
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インターネットセグメント
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ð
ï |
theglobe.com
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Double Click Razorfish
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wsj.com barnesandnobe.com
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CDNow/N2K
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NYの地域としての魅力は簡単に言えば以下の点にあるとまとめられる。
- メディア、出版、広告、金融といったNYの代表的な既存産業の集積がインターネット開発を促進している。
- フォーチュン500社がNYに集積していることでサービス・プロバイダーの顧客ベースが大きい。
- ウォール街による金融のリソース及び投資資金が充実している。
- ニューメディア・プログラムが大学において充実している。
- 「都会文化」がクリエイティブな人材を引き付ける。
(発展の状況)
このような魅力によって続々と新規企業が生まれている状況については、「ニューヨーク・ニューメディア協会」(www.nynma.org)がプライスウォーターハウス・クーパーズと共同で行った第3次の調査(2000年3月発表)に詳しい。そのハイライトは以下の通りである。
@ NYのニューメディア産業は引続き高い成長
- 97年から99年の間にニューメディア産業の従業員数は年率40%で伸びて25万人に
- 全体の賃金は年率55%で伸びて83億ドルに
- 全体の企業数は年率25%で伸びて8,500社に
- 全体の売上高は年率53%で伸びて170億ドルに
A マンハッタンがNYにおけるニューメディア活動の引続き中心
- NY地域のニューメディア企業の45%がNY市に位置(他はNY州(非NY市)に16%、ニュージャージー州に28%、コネチカット州に11%。(注:NY都市圏と言う場合、この3州(Tri-State)を言う場合が多い))
- NY市のニューメディア企業のうちの82%がマンハッタンに位置
- マンハッタンのニューメディア企業のうちの54%がシリコンアレー(41丁目以南)に位置(つまり41丁目以南だけだと、1,675社で約5.7万人の従業員)
B 起業家が主体ではあるが、その後の段階では企業の成長が重要
- 8,500社のうち売上が100万ドル未満のところは70%で、これは97年から83%減
C Eコマースを行っている企業数が急増
- Eコマースを主要なビジネスとしているところの企業の比率は97年の3倍
D NYニューメディア企業は資本投資の注目を引く
- NYのインターネット企業のIPOは97年以降で60億ドルに達する
E NYはニュービジネスの移転先として魅力を高めつつある
- 1,700以上の企業がNYに移転あるいはNYにオフィスを開設しており、97年以来3倍
以上のような調査結果であるが、一言でニューメディア企業と言っているが、コンテンツのデザイン、開発を中心とする企業群というのがこれまでのNYのニューメディア企業の特徴であったが、以下のようにEコマースを行う企業が増えるなど、業種的にもバラエティーに富んできつつある。
企業のコアーのサービス及び商品
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分野 |
1999年
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1997年
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コンテンツ設計及び開発 |
41%
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60%
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電子商取引 |
18%
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4%
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コンテンツのパッケージング及びマーケティング |
14%
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9%
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ニューメディア企業に対するイネーブリング・サービス |
12%
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11%
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ソフトウェア開発 |
5%
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5%
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コンテンツのディストリビューション |
5%
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7%
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イネーブリング・サービス |
4%
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0%
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コンテンツ作成のツール |
1%
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3%
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(最近のイニシアチブ)
ニューヨークのシリコンアレーの振興に大きな役割を果たしているが、上述の1994年に設立されたニューヨーク・ニューメディア協会であり、各種の会議及びその他のイベント、実習生研修プログラムなどを開催し、高い評価を得ている。メンバーシップも2,500社を代表する7,000名以上から成っている。また、同協会もテナントとなっているウォール街に近い55
Broad Street に立つ「New York Information Technology Center(NYITC)」(www.55broadst.com)は、シリコンアレーの中心的なインテリジェント・ビルとして大変有名で、多くの視察者を集めている。
これらのビルへの入居費の割引など具体的なイニシアチブを推進してきたのがニューヨーク市の「Economic Development Corporation(EDC)」(www.newyorkbiz.com/s1index.htm)であり、それらの施策をまとめると、以下の通りとなる。
イニシアチブの一覧
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ニューヨーク市政府によるイニシアチブ
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Mayor’s Council On New Media |
産学官のパネルで、NY市のニューメディア産業の成長持続のためのイニシアチブを開発
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NYC Prospect Street Discovery Fund |
NY市をベースとするハイテク企業のための7,500万ドルの投資基金 |
Emerging Industries Fund |
ニューメディアや他のハイテク企業の初期段階の資金提供のための2,500万ドルの投資基金
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Plug-N-Go |
マンハッタン南部のインターネット・レディーのオフィス・スペースを1平方フィート当たり19ドルという格安レートで提供
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Energy Cost Reduction Program |
NY市内で営業を行っている企業に対し、電力料金を12年間割引 |
Digital NYC: Wired To The World |
マーケティングのための補助金を出し、先端技術地域の開発を促進 |
EDC Business recruitment Services |
NY市に移転してくるか市内で拡張しようとする企業に対し、幅広いビジネス・アシスタンスを提供
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Industrial Development Agency |
98年以降、7つのニューメディア企業に対し、その企業がNYに留まりさらに発展するように便益を提供
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ニューヨーク州政府によるイニシアチブ |
NY Assist.com |
コロンビア大学やニューヨーク大学によるジョイント・ベンチャーのサイトで、ニューメディア企業に対しNY州が提供する各種ビジネス・アシスタンス情報を提供
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State Technology Law |
州技術局に対し、ビジネスの電子的手段(電子記録や電子署名を含む)による向上のためのガイドラインの開発を指示
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New York State Emerging Industry Jobs
Act |
NY州内でR&D投資をする優良な成長期の技術企業に対し、9-A税額控除条項を適用
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New Media Internet Task Force |
40名の委員からなるタスクフォースでニューメディア産業の成長とインターネット利用の向上を促進するための州の政策を立案
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New York State Office of Science and
Technology and Academic Research |
学術機関の経済成長への貢献度を高めるため、教授陣やインフラへのサポートや学術機関と主要産業との協力関係の促進などを実施
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ニューヨーク大都市圏におけるイニシアチブ |
“Job’s For A New Economy” |
ニュージャー州知事が発表したニューメディア産業の競争力促進のための技術関連イニシアチブのパッケージ
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